12月16日実施「全世代型社会保障構築会議」の概要
こんにちは!東京都江戸川区のユニケア訪問看護リハビリステーションです。
2022年も残すところあと数日あまりとなりました。
急に寒くなり、北陸方面では大雪で大変な状況になっているとのこと。
雪が降ると物流に支障を来たしてしまいますし、生活に大きな影響を与えます。
自然の力には到底勝てませんが、雪対策も含め私たちもアクシデントに備える必要がありますね。
さて先日のコラムでは、社会保障審議会介護保険部会で審議された内容を抜粋してご紹介いたしましたが、12月16日に行われた「第5回全世代型社会保障構築本部」という首相肝入りの会合において、2024年度の介護保険制度改正・報酬改定にかかる重要な提言がなされました。
皆様と共有したく今回取り上げさせていただきます。
ぜひお付き合いいただけますと幸いです。
利用者負担の改定について
次回介護保険制度改正にあたり、様々な重要事項が取り上げられ検討してまいりました。
その一つ、利用者負担の引き上げがどうなるかについて大変注目されていました。
政府は16日、2024年度に控える次の介護保険改正の焦点となっている利用者負担の引き上げ(2割負担の対象拡大)について、結論を来夏に先送りする方針を正式に決めたとのことです。
これは、利用者負担の引き下げを「しない」こととなったのではなく、結論を先送りしたということです。
ただ、物価高騰やコロナ不安等が払拭しない中で、今これをぶち上げてしまうのは難しいという雰囲気を醸し出しております。
首相官邸で行われた「全世代型社会保障構築本部」において、今後の改革の全体像を示す報告書がまとまりましたが、その中で介護保険法の改正に関しても言及されております。
利用者負担の引き上げなど制度の持続可能性の確保を図る施策について、「来年度の『骨太の方針』に向けて検討を進める」と明記されており、先送りとなったわけであります。
介護保険改正は3年に1度行われますが、その内容の骨格は2年目の年末に固められるのが通例と言われております。
まあ、重要事項については厚生労働省と財務省との折衝が繰り広げられるのですが、今回はかなり慎重論が占めたのでしょう。
利用者負担の引き上げなど重要な議論がすんなり決まらないという、異例の事態となったようです。
これは前々から議論が白熱されている事項ではありますので、今後どうなるのか大変心配です。
ご利用者様はもとより、事業所にも影響を及ぼしかねません。今後の動向を注視したいと思います。
既存の処遇改善加算の取り扱い
現在、介護保険制度下において「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つがあるわけですが、厚生労働省は介護職員の処遇改善を具体化する目的で、この3加算を「一本化」することを検討するようです。
具体的には、次の介護報酬改定を念頭に、「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の統合を目指しています。
この加算は算定要件が複雑でわかりにくい上に、たくさんの書類を作成しなければならないため事務負担が大きいという現状があります。
これは今に始まったことではありませんが、介護業界はあまりに膨大な書類を取り扱うために、生産性があまり上がらない業界であると言われてきました。
加算を算定することは、それだけ収益を高めることにはなるのですが、いかんせん書類が多すぎます。
書類作成自体は収益に直接影響するとは言えず、むしろ本業の足枷とも捉えられかねません。
こういった不満に国が応えることにより、介護現場の生産性の向上につなげる狙いがあると言えます。
ただ「一本化」するという話に惑わされてはいけないと筆者は考えます。
一本化することで、加算率が下がったりすることがないよう、しっかり見守らなくてはなりません。
「全世代型社会保障構築本部」では、これらの事項を介護職員の働く環境の改善に向けた「政策パッケージ」として提示しております。
その中に「処遇改善に関する加算の一本化について検討を進める」と明記されていたわけですが、同時に「職場環境等の要件について、生産性の観点から見直しを検討する」とも明記されていたのです。
これまでの3本の加算に加え、新たな処遇改善加算を新設するという風にも読み取れます。
それ自体大変喜ばしいことではありますが、もし新設するならば、今度こそケアマネさんや看護師、事務員さん等にも配分できるような仕組みにしてほしいです。
本コラムでも何度も取り上げておりますが、ケアマネさんへの処遇改善は本当に至上命題です。
介護サービスは介護職員だけでは当然成り立たず、ケアマネ・看護師・相談員・リハビリ・栄養・事務員等とのチームワークをもってはじめて成り立つわけです。
もちろん、介護職員の処遇の低さは本当に問題で、何とかしなければならない重要問題ではあります。
しかし、ケアマネや看護師等の処遇改善も同じ位大切です。
処遇改善加算はこれまで、ケアマネ・看護師等が全くと言ってよい程恩恵が受けられませんでした。
今回は、日頃の頑張りに報いるような仕組みに整備してほしいと、切に願います。
本件に関する詳細は、年明けの「社会保障審議会 介護給付費分科会」で議論することになります。
福祉用具の対象範囲の拡大
9月に実施された「福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」において、下記の件について取り上げられています。
以前も本コラムで取り上げております(詳細は過去コラムをご覧下さいませ)。
本件の最大のテーマは、「一部の貸与種目について、貸与or販売の選択を可能にするかどうか」についてであります。
具体的には、ある程度中長期の利用が見受けられる歩行補助杖やスロープ、手すりなどのうち、比較的廉価なものを対象に、利用者が貸与or販売を選択できるようにしてはどうかというものです。
「貸与or販売」とは言っていますが、実質「販売」に振り向けたいことは明らかです。
貸与にしてしまうと、その期間は介護保険が適用することになります。社会保障財源は有限であるから、削れるところを削りたいと言いたいに決まっています。
これは、福祉用具のみのケアプラン問題にも直結する話でもあります。
この方針は「メリット」と「デメリット」を慎重に考える必要があろうかと思います。
もちろん、購入したい方はそうすればよいですが、大多数の方は単純に「負担増」となってしまいかねません。
負担増もさることながら、福祉用具を軽視する風潮になってしまうことが一番心配なわけです。
以前のコラムにも書きましたが、福祉用具を上手に取り入れていることにより、自立支援が図られているという事実を決して忘れてはなりません。
そういう事実を踏まえて、業界関係者ももっと声を上げていただき、慎重議論を図っていただきたいところです。
介護行政手続の原則デジタル化
指定申請と始めとする行政手続書類の煩雑さを極力なくすべく、現在いろいろなものが「押印不要」「書類の簡略化」が図られています。
それ以外は大変ありがたいことですが、まだまだ足りないと思います。
先程申し上げた処遇改善加算もしかりで、介護業界はとにかく書類が多すぎます。
ICTをはじめとするテクノロジーの導入も非常に重要なのですが、考え方そのものを見直し、これまでの常識は本当に「常識」であったのかを振り返り、思い切った対策を実行するときではないでしょうか。
優良事業者・職員の総理表彰等を通じた好事例の普及促進
これは国が提唱する施策にしてはユニークだな、と思いました。
介護職員をはじめとする方々は、もちろん待遇面もさることながら、介護という仕事にやりがいを感じている方が多いと思います。
しかし仕事に忙殺されてしまい、自分たちのしていることは「当たり前」で「取り留めのない」仕事であると考えがちではないでしょうか?
しかし、介護という仕事は大変尊く、素晴らしい仕事です。まさに「エッセンシャル・ワーカー」そのものであります。
優良な事業者や多大な貢献をした個人に対し、国を挙げて表彰するという取り組みは大変よいことだと思います。
「そんなの、大したことないではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、人間は評価されるとうれしいものです。
上司から「日頃から仕事ぶりを見ているけど、頑張っているね」と声をかけられたらどうでしょうか。筆者であればうれしくなりますね。
頑張っている個人や団体(事業所)を表彰し、同時にそれを何らかのインセンティブにつながれば、もっと相乗効果が上がるものと思います。自己肯定感も上がるというものです。
以上、お付き合いいただきましてありがとうございます。
年明けは、2024年度の改正に向け、激論が繰り広げられます。
今後も国の動向を窺いたいと思います。
次回の投稿をお楽しみに!!
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