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物価上昇~訪問看護サービス等に与える影響~

[2022.07.25]

訪問看護サービスを運営する当法人にも、当然ながら少なからず影響を受けております。

例えば、医療物品も価格が上昇しており、調達する際の負担は低くありませんし、ご利用者様宅へ移動する際の移動コストにも影響が受けております。

これは皆様も同様ではないでしょうか?

今回は、物価の上昇に伴う介護事業への影響と打開策について取り上げたいと思います。

是非お付き合いいただけますと幸いです。

 

「物価が高い」とはどういうことか?

物価高という言葉は最近よく聞かれますが、どういう状態が「物価が高い」と判断されるのでしょうか?

ここで、少しだけ経済学の話をさせていただきますと・・・

物価は、総務省が毎月出している「消費者物価指数」が目安になります。

 

消費者物価指数は、消費者が実際に購入する段階の「商品小売価格」の変動を表す指数のことです。

総務省が公表した2022年6月の消費者物価指数は、前年(2021年)同月比で+2.4%だったそうです。

わかりやすい例を挙げるための単純計算になりますが、スーパーで合計5千円の買い物をした場合、物価が2.4%上昇したとなると125円高い買い物をした、ということになります。

125円程度であれば許容範囲と言えるかもしれませんが、定期的に買い物をすることを考えれば、この数字は見過ごせる金額とは言えないと思われます。

しかし、上記物価指数は消費財全体の数値であり、生鮮食品およびエネルギーを除いた上昇は+1.0%にとどまるとのこと。

このことが、介護事業においてどの程度影響を及ぼすのでしょうか?

 

物価は介護事業運営に密接な関係がある

私たちが介護サービスを提供するにあたり、もしかしたらあまり物価高の影響について気づきにくい部分があるかもしれません。

しかし、物価高が介護事業にもたらす影響は計り知れず、ものすごく密接な関係があるのです。

 

生鮮食品やエネルギー関連の価格高騰は、介護事業所・施設経営に直結する話です。

例えば、通所介護や介護施設で行われる入浴サービスでは、かなりの量の水道を使用します。

また、送迎等で車両関係費としてガソリンも相当使用するでしょう。

 

さらに、ご利用者様へ食事を提供される事業所もたくさんあると思いますが、食材費の調達にも物価高の影響を受けます。

 

先程、生鮮品やエネルギー以外の物価指数は0.8%であると申し上げました。

以上を考慮すると、食材費や水道光熱費にかかる費用は、全体の消費者物価指数+2.5%よりもさらに上昇していることは明らかです。

今年前半からの急速な物価上昇は、介護事業経営にも深刻な影響を及ぼしていることは、もはや間違いのない事実であると言えます。

 

介護事業所において物価高がなぜ問題なのか?

私たちの普段の生活に置き換えれば、物価の高騰が非常に厳しい話であることを、否定する方はいらっしゃらないでしょう。

家計の収入が上がらなければ、単純に支出増となり、所得の多寡によって直接的な影響を受けることになります。

 

これは、どんな業種でも苦労の度合いは変わらないと思うのですが、介護サービス事業においてはもっと深刻な問題かと思うのです。

それはなぜでしょうか?

理由はいくつもあると考えられますが、筆者が考える最大の理由は、食材費や水道高熱費が高騰した分をご利用者様に転嫁しにくいからです。

 

介護保険サービスを行ったことによる対価、すなわち「売上」は、保険報酬と自己負担となります。

皆様ご承知の通り、介護報酬は基本報酬・加算含め「公定価格」です。

公定価格ですので、事業者レベルで勝手にいじることができません。

ということは、基本的に物価が上昇したとしても、その分を介護報酬の増額をもって補填することはできない、ということなのです。

 

介護関連のニュースサイト「JOINT」では、大手介護事業会社であるSOMPOケアの記者会見が紹介されていました。

今年4・5月時点で水道光熱費が前年同月比4割増等、介護運営において厳しい状況であるとのことです。

業界最大手の企業ですら厳しいのですから、日本全国の介護事業所全体が厳しいということは明らかです。

 

ここへきて、新型コロナウイルスの感染の拡大が進んでおり、これからまだまだ暑い日が続くこともあって熱中症の心配もあります。

エアコン等の電力消費もなかなか減らせない中、この物価高騰を事業者の力だけで何とかすることは正直難しいと言わざるを得ません。

 

2019年の消費税増税における「臨時の介護報酬改定」

似たような現象は、最近もありました。

それは、2019年の消費税増税時です。

 

2019年10月の消費税増税に伴い、消費の冷え込みが懸念されたとともに、介護事業所の負担増が心配されました。

それを見越して、介護報酬の期中改定が行なわれたのです。

その時の改定率は+0.39%でした。

 

その時の物価上昇率(消費者物価指数)は、前年同月比で0.2%の上昇にとどまっています。消費税の引き上げ分も考慮した数字を公表しているので、比較するにはよい材料かと思います。。

以下、2019年消費増税に伴う消費者物価指数の動向(上段)2019年介護報酬改定に関する社保審・介護給付時分科会の審議報告(下段)をご紹介します。

 

国や地方自治体の様々な施策

こうした厳しい状況に対し、政府も何とかしなければということで、いろいろな施策を講じております。

 

内閣府地方創生推進室は今年4月の総合緊急対策で、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を拡充し、「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」となる枠組みを新たに設けました。

各自治体でも、政府が打ち出したこの枠組みなどを応用し、自治体ごとに補正予算で「原油価格・物価高騰対策」にかかる個人・事業者向けのさまざまな対策を打ち出しています。

 

東京都では、原油価格の高騰等で業績不振となった中小企業に対し、助成金の交付を受けられる施策を講じております。

また、宮城県仙台市では高齢者福祉施設等を対象に「食材料費の助成事業」を実施しています。

こちらは、入所施設の助成単価が13,300円。これに利用者数や開所期間等を乗じるなどで支給額を決定しているそうです。

その他、各地でいろいろな施策が講じられていることと思いますが、今般の物価高騰の影響が計り知れないということを意味しているといってよいでしょう。

 

介護事業所に与える影響を打開する方法はあるのか?

先程も申し上げましたが、今回の物価上昇はコロナ禍の長期化も相まって、さらに長期化する可能性が高まっております。

また、介護事業の場合、利用者からの費用徴収を上乗せできる範囲は決して広くないことも前述したとおりです。

これ以上光熱水道費や食材費が高騰することとなれば、国や自治体が打ち出すさまざまな支援策では追い付かず、事業運営に重大な影響を受けることとなりかねません。

介護事業所・施設で今でも取り組まれているさまざまなコストカットに関して、さらに範囲を広げざるを得ないというケースも増えてくるでしょう。

「利用者に影響がおよばない範囲」で、照明や空調をOFFにするという動きも見られます。

 

確かに無駄なコストは削減し、節約に励むことは必要です。

ただ、闇雲な節約は危険も伴います。

このところの猛暑で、エアコンの室温を上げたり消したりすることも限界があります。

ご利用者様の状態悪化が進むとなれば、自立支援や重度化防止を進めるどころではなくなり、本末転倒となってしまいます。

ご利用者様の健康や安全を守ることが、私たちがすべき最大の使命の一つであるわけですから、それを脅かす程のコストカットは当然できないわけです。

 

消費税増税の際の物価上昇に比べても、今回の消費者物価指数+2.4%は異常ともいえる数値と言えます。

しかも、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、その影響の長期化することが懸念されております。

 

それを考えると、その場限りで終わってしまいかねない交付金より、やはり介護報酬の期中改定に着手すべき時期に来ているのかもしれません。

今年は「介護職員等ベースアップ等支援加算」が新設されるため、10月の期中改定が決まっているわけですが、各種の影響を考慮するとそれだけでは足りず、基本報酬自体の改定を真剣に審議するところに来ているようにも思えます。

介護報酬が上がれば、それはご利用者様への負担に直結するため、慎重に進めなければなりません。

そのあたりは「介護保険利用者世帯等への給付金」を新設するという方法もあります。

先般の消費増税では「臨時福祉給付金」という名称で似たような支援がありました。

 

今回の物価上昇がより長期化するとなれば、2024年度の介護報酬改定の審議も、それに向けた議論へと進む可能性はあり得ると思われます。

介護事業経営者は、物価上昇下の経営状況を正確に把握する必要があるといっても過言ではありません。

 

今後介護事業所に求められていること

私たち訪問看護ステーションを含めた各事業所・施設としては、各地域で打ち出している様々な施策に対してアンテナを張っていくことは必要です。

それには、受動的でなく能動的な行動が不可欠です。

 

日常的にホームページ等を確認しつつ、運営されている事業所等で利用できるものがないかどうかについて情報収集していくことです。

これができるかできないか、やるかやらないかが、今後の事業所運営を継続的に行うためのトリガーになると言っても過言ではありません。

そして、事業所が日頃から努力されていることを、いろいろな手段を活用して周囲に発信していくことも必要でしょう。

 

私たちもまだ道半ばで、十分では無い部分もありますが、地域の皆様と手を携えてこの難局を乗り越えていくことで、それが介護保険施策の構築に向けてよい方向へと向かうよう、努力を重ねていきたいと思います。

 

今回は、物価上昇に伴う介護事業者への影響と、今後目指すべき打開策について考察してまいりました。

ユニケア訪問看護リハビリステーションでは、今後も皆様に少しでも有益となり得るような情報を発信してまいりたいと存じます。

当法人の訪問看護サービスにご興味をお持ちの方、是非ご連絡くださいませ。

 

【参考URL】

総務省ホームページ「消費者物価指数CPI」

介護のニュースサイトJOINT~SOMPOケア株式会社会見~

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(原油価格・物価高騰対応分)

仙台市福祉施設等食材料費負担軽減事業補助金

原油価格高騰 中小企業へ助成金等の支援 - 東京都

日本経済新聞HP~2019年消費増税に伴うCPI値の推移~

臨時福祉給付金(2019年実施~現在は終了)

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